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MySQLとPostgreSQLの違い

MySQLとPostgreSQLの主な違い
アーキテクチャと設計思想
- MySQLは「純粋なリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)」で、扱いやすさや軽快な動作を優先した設計です。
- PostgreSQLは「オブジェクトリレーショナルデータベース管理システム(ORDBMS)」で、標準SQLの遵守や拡張性・柔軟性を重視しています。
機能と拡張性
- MySQLは機能がシンプルで、Webアプリケーションなど読み取り中心の用途で高いパフォーマンスを発揮します。ストレージエンジンの選択肢が多く、軽量で安定性が高いのが特徴です。
- PostgreSQLは複雑なクエリや大規模データセット、書き込み頻度の高い処理に強く、マルチバージョン同時実行制御(MVCC)や多様なデータ型、オブジェクト指向機能をサポートしています。
ACID準拠とデータ整合性
- MySQLは特定のストレージエンジン(主にInnoDB)利用時のみACID準拠となります。
- PostgreSQLは全ての設定で完全にACID準拠です。データの整合性やトランザクション管理が重要なシステムに向いています。
パフォーマンスと用途の違い
- MySQLは読み取り専用やWebアプリケーション、リソースが限られた環境での利用に適しています。
- PostgreSQLは書き込み頻度が高いシステム、大規模データ、複雑な分析や業務システムに適しています。
その他の違い
- データ型の多様性はPostgreSQLが優れています(配列、幾何学、ネットワークアドレスなど)。
- MySQLは初心者にも扱いやすいですが、PostgreSQLは高度な機能や拡張性のためにやや複雑です。
比較項目 | MySQL | PostgreSQL |
---|---|---|
データベース技術 | 純粋なRDBMS | オブジェクトリレーショナルDBMS |
ACID準拠 | 一部ストレージエンジンのみ | 全設定で完全準拠 |
データ型 | 基本的な型 | 多様な型(配列・幾何学・ネットワーク等) |
同時実行制御 | 書き込みロック | MVCC(マルチバージョン同時実行制御) |
パフォーマンス | 読み取り中心・軽量・高速 | 書き込み・複雑なクエリ・大規模データに強い |
拡張性 | シンプルで拡張性は限定的 | 高度な拡張性・柔軟性 |
利用用途 | Webアプリ・小中規模システム | 業務システム・分析・大規模システム |
プロジェクトの要件やデータの規模・複雑さに応じて、適切なデータベースを選択することが重要です。
MySQLとPostgreSQLの具体的な使い分け
MySQLが向いているケース
- 読み取り専用や読み取り中心のWebアプリケーション
例:ブログ、ニュースサイト、ECサイトの商品表示など。MySQLは軽量で高速なため、アクセス数が多くても安定して動作しやすい。 - シンプルなデータ構造や複雑なクエリが不要なシステム
JOINやサブクエリが単純で済む場合や、データベースの機能拡張が不要な場合に適しています。 - レガシーなシステムや広く使われているLAMP環境(Linux, Apache, MySQL, PHP/Python/Perl)との親和性が高い場合。
- バージョン管理や移行のしやすさを重視する場合
多くのホスティングサービスで標準サポートされており、導入や運用が手軽です。
PostgreSQLが向いているケース
- 複雑なクエリや分析処理が必要な業務システム
例:会計システム、BIツール、データ分析基盤など。高度なJOINやCTE(共通テーブル式)、再帰クエリなどが活用できます。 - 書き込み・更新が多いシステムや大規模データセットの管理
MVCCによる高い同時実行性能があり、トランザクションの整合性が重視されるシーンに強い。 - 独自データ型やJSON、配列などの高度なデータ構造を扱いたい場合
カスタムデータ型やNoSQL的な機能拡張が必要な場合に適しています。 - 標準SQL準拠や拡張性、将来的なスケーラビリティを重視する場合
複雑なビジネスロジックや拡張性の高い設計が求められるプロジェクトに向いています。
まとめ
選択基準 | MySQLが適する例 | PostgreSQLが適する例 |
---|---|---|
用途 | シンプルなWebアプリ、読み取り中心 | 複雑な業務システム、分析基盤、書き込み・更新が多い |
クエリの複雑さ | 単純なJOIN・サブクエリ | 複雑なJOIN・CTE・再帰クエリが必要 |
データ量・同時実行性 | 小~中規模、同時接続数が少なめ | 大規模データ、同時接続・トランザクションが多い |
拡張性・独自機能 | 標準的なRDBMS機能で十分 | カスタム型、JSON、NoSQL連携、拡張性が必要 |
導入・運用のしやすさ | 導入が簡単、広くサポートされている | 専門知識が必要、拡張や調整が柔軟 |
プロジェクトの要件や将来的な拡張性、運用体制に合わせて選択することが重要です。
なぜ効率さが違うの?
MySQLとPostgreSQLで効率(特にインデックス操作のパフォーマンス)が異なる主な理由は、インデックスの内部構造、サポートされるアルゴリズムの多様性、同時実行制御の実装にあります。以下、核心的な違いを解説します。
1. インデックスの物理構造の根本的な違い
MySQL(InnoDB)とPostgreSQLでは、インデックスとデータの格納方法が異なり、これが読み書きの効率に直結します。
- MySQLのクラスタ化インデックス:
データ行がプライマリキー順に物理的に格納されます。インデックス(Bツリー)のリーフノードにデータ行そのものが含まれるため、プライマリキーによる検索は高速です。しかし、データ挿入時には構造全体の再編成が必要で、書き込みコストが高くなります。 - PostgreSQLの非クラスタ化インデックス:
データはヒープ表(順序なし)に格納され、インデックス(Bツリー)はデータへのポインタのみ保持します。このため、挿入時はポインタの更新だけで済み、書き込みが軽量です。ただし、データ検索時にはインデックスとデータの両方にアクセスする必要があり、追加のI/Oが発生します。
この構造差により、MySQLは読み取り中心、PostgreSQLは書き込み頻度の高い環境でそれぞれ強みを発揮します。
2. インデックスの種類とアルゴリズムの差異
両DBMSはBツリーを基本としますが、サポートするアルゴリズムの幅が効率差を生みます。
特徴 | MySQL | PostgreSQL |
---|---|---|
主要インデックス | Bツリー、Rツリー(空間データ用) | Bツリー、ハッシュ |
特殊インデックス | FULLTEXT(全文検索) | 部分インデックス、式インデックス、GIN、GiST、BRIN |
最適化の柔軟性 | 限定(基本的なBツリー中心) | 高(多様なアルゴリズムで特定クエリを最適化) |
- MySQL: Bツリーが主流で、単純な等価検索や範囲検索に適しますが、複雑なデータ型(例:JSON、配列)の処理は苦手です。
- PostgreSQL: 部分インデックス(条件付き行のみ索引化)や式インデックス(関数結果を索引化)などでリソース効率を向上。さらに、GiST(汎用検索ツリー) や GIN(汎用逆インデックス) といった高度なアルゴリズムにより、地理空間データや全文検索などで優れた効率を発揮します。
3. 同時実行制御(MVCC)の実装差
書き込み時の競合処理も効率に影響します。
- PostgreSQLのMVCC:
マルチバージョン同時実行制御をネイティブサポート。書き込み処理中でも読み取りをブロックせず、高並列環境で優れたスループットを実現します。 - MySQLのMVCC:
InnoDBストレージエンジンのみで利用可能ですが、実装が軽量でロック競合が少ない代わりに、複雑なトランザクションでは制限が生じます。
まとめ:効率差の核心
効率の違いは、アルゴリズム自体というより設計思想の差に起因します。MySQLは「シンプルさと読み取り速度」を優先し、PostgreSQLは「柔軟性と書き込み耐性」を重視しています。用途に応じた選択が重要です。
効率指標 | MySQLの強み | PostgreSQLの強み |
---|---|---|
読み取り速度 | プライマリキー検索が高速 | 複合条件・非構造化データの検索に強い |
書き込み速度 | 単純挿入は高速、但つ再編成コスト有 | 挿入・更新の並列性が高い |
拡張性 | 標準的な用途向け | 多様なデータ型・クエリに最適化可能 |